スタンダールの『パルムの僧院』の上巻のみ読了。スタンダールは『赤と黒』のみ高校生の頃読んだっきりで、遠ざかっていた。ゼミでの発表も終わり、少し手の空いた今のうちに、気分転換も兼ねた趣味的読書のうちの一つなのだが、非常に楽しんでいる。久しぶりに「青春」小説を経験している(いい加減な言い方だ)。下巻はいつ読み終わることができるだろうか。

愚にもつかないみじめな生活で陰気な獣、頓馬にもなり下がらずに、4年以来俺は大きな都会に住み、立派な馬車ももっている。おかげで羨望だとかなんだとか、田舎の下種な気持ちにも染まずにすんで来たわけだ。あの叔母様はやさしすぎる。俺が銀行から金の出しようが少ないといっていつも叱るんだからなあ。俺はこんないい境遇を永久にぶち壊すきなんだろうか?この世にたった一人の友達なくするつもりなんだろうか?一言嘘を言へばいいのだ。まず世界に2人といないあの可愛い女性に、俺が胸いっぱいに愛情を抱いているあの人に、ただ一言、「私はあなたを愛しています」と言いさえすればいいのだ。恋で愛すると言うことがどういうことか知らないこの俺が。そうなったらあの人は、俺の知らない情愛がこの俺にないといって一日責めていることだろう。マリエッタと来たらまるで反対だ。俺の心の中なんかに見えやしない。愛撫を心からの情愛だと思いこんで、俺が恋に夢中だと信じ、また自分を誰よりも仕合せな女だと信じている。


 「恋で愛する」というのは一体どのような愛なのだろうか。「恋で愛していない」のが、愛撫を前提、媒介にした「恋」ということなのだろうか。心からの情愛が「恋で愛する」ことなのだろうか。主人公のファブリスは、このように独白し叔母であるサン・セヴェリーナ公爵夫人を慕っている。彼らの2人の関係が今後どうなるか楽しみである。ゆっくり読もう。