オリヴィエ・フォルラン『フランスの知識人とイタリア(1945-55)』

cinna85mome2006-04-07


 グルノーブル留学のときに授業に出ていたムッシュフォルランの本、Les intellectuels francais et l'Italie (1945-1955) : Médiation culturelle, engagements et représentations が最近出版されたので宣伝する。

 フォルラン先生の授業はものすごく好きだった。話すスピードもそれほど速くなく、幾度かいったことを繰り返しながら、授業を進めてくれるので、フランス語が苦手なぼくも他の授業に比べて理解しやすかった。今では、1番前か2番目に座って受講していたぼくに相当配慮してくれていたのだと、勝手に解釈している。

 この授業でもそうだったのけれど、歴史専攻の学生は、授業に出ていた印象では、大部分が白人で、白人以外の人はほとんど見当たらなかった。アジア系はどの授業でもぼく一人、本当に時々、黒人をみかける程度。アラブ系と白人のハーフっぽい人も一人いたような気もする。ぼくが受講した授業で、1人か2人程度、有色の人は全部でぼくを含めて3人くらいしか見かけなかった。同じ授業に出ていたやつに聞いてみると、留学生には他にケベコワーズとポロネがいたらしいが、見分けがつかなかった。

 先生の授業では、発表することが課せられていたのだけれど、まだぼくにそんな実力はなく、「できません」と言いにいくと、やさしく了解してくれた。

 先生は授業の際、ものすごく真剣に講義を進めていただけでなく、学生の発表にも熱心に耳を傾け、学生が先生の話を書き取るのと同じようにすさまじい勢いでメモし、学生の良い点、悪い点を指摘していらっしゃった。日本でこのような態度で授業に臨む人をぼくは見たことがなく、最初はちょっと衝撃を受けた。もちろん、この大学のほかの授業でもここまで熱心な人はいなかったのだけれど。

 ある授業で、学生の発表中に、2人の女子生徒が無駄話をし始めた。それほど声は大きくなく、ぼくは横に座っていたのだけれど、うるさくは感じなかった。それでも先生は、まもなくして、眼の奥を真っ赤にし(ほんとにそのようにみえた)、怒鳴り始めた。「ここをどこだと思ってるんだ。大学だぞ。大学はあなた方のような人のためにあるのではない。それに、学生が時間を割いて真剣に発表しているというのに、あなた方の態度はなんだ。天気もいいし、しゃべるなら、教室から出て行きなさい。あなた方がいなくても全然問題ない」。1年以上も前のことで、フランス語にもそれほど自信もなく、彼へのよき思い出として、脚色されているところもあると思うけれど、大体こんなことを言ってキレた。


 でも、一番の思い出は、以下。先生は、授業中によく簡単なクイズを出していたのだけれど、(「20世紀初頭に作られた王党派団体は?」とかそんな程度の)、アルジェリア戦争のところを扱っているときに、「ギ・モレ」と答えるべき質問を先生が出した。質問をすると、いつも誰か一瞬のうちに答えてしまうのだけれど、このときはたまたまわかるひとがいなかった。で、ぼくがはじめて答えた。「あなたがたはこんなこともわからないのか。日本人なら全員わかるぞ」と冗談を言って教室内を笑いに包んだ。

レベルの低い話で申し訳ないが、これを思い出すと、なんと言うか、勉強しなきゃなとやる気になってくる。


そういう先生の本が出た。買おう。