cinna85mome2004-06-27


レポート「音楽CD 売り上げ低下の要因は何か」→http://www.slis.keio.ac.jp/~ueda/semi/2002musiccd.pdf


 ノラ・ジョーンズのセカンド・アルバム『Feels like home』を買った。このCDは、悪名高いあのCCCDである(コピーコントロールCD) 。ウィンドウズメディアプレイヤーでは再生はできるものの、MP3ファイルに変換できない、つまりこの形式で録音できないようになっており、もちろんMDにもおとすことはできない(ものもある)。
 未確認なのだが、このコピーコントロールをCDに与えると、音が悪くなるのではないだろうか。ノラ・ジョーンズの伸びやかな声は高音になると、ひずんで聴こえるような気がする。ピアノの音もまた然り。音がかなり不安定で、音量を上げて聴けば、すぐに音が割れてしまう。音質もクリアではなくざらざらしている。前のアルバムには、コピーコントロールはついていない。聞き比べるとその音質の差がはっきりしている。

 私は、好きなアーティストのCDは必ず買うようにしている。MP3やMDによる音質の劣化を経ずに聴くことができるからである。しかし、コピーコントロール機能の登場によって、私の買い分けは意味を持たなくなってしまった。

 最初に挙げたレポートが示しているように、CDの売り上げ低下はMP3ファイル形式でのコピーの増殖が主要な原因ではない。よく言われていることだが、携帯電話への過剰といっていいほどの投資などの別の社会的背景も十分にCDの売り上げ低下に貢献している。確かに、レンタル店の大型化や店舗増、メディアプレイヤー、MDの普及など録音しやすい状況は広がっている。しかし、コピーコントロールで録音させないようにし、購入しても劣化した音しか聴かせないというレコード会社の試みは、不健全で非寛容だと思う。

 私はノラ・ジョーンズが好きだ。コピーコントロールがこのCDに含まれていなければ、私はおそらくもっと好きになれたと思う。コピーコントロールは、コピーファイルの増殖を防ぐことができたとしても、アーティストに対する愛を生まない。レコード会社は、消費者の、アーティストへの、音楽への愛情の強化、深化を犠牲にしてまで、音を売りたいのだろうか。良い音楽を「初めから」劣化した音質で聴かすことに罪悪感を感じないのだろうか。

 消費者の側ももっと努力する必要がある。MP3やMDは音が良くないという事実をもっと自覚すべきだ。私の耳は、もちろん上等なものではないが、聞き比べることで、良いオーディオなどそろえなくても、この違いはわかるようになると思う。

 売り上げが落ちたことを短絡的にコピーファイルの拡散に結びつけ、いかほどのコストかはわからないが、消費者の愛情をむやみに奪う暴挙に走る。レコード会社はもっと広い視野で考えてほしい。つまり、CDが売れなくなったことの原因は、アーティストの質が下がったこと、くだらない音楽ばかり流通させていることにあるのだということをもっと勘案して、そのための企業努力をこれまでやってこなかったことに対して反省の意をもっと強く持ってほしい。コピーコントロールは上記のような状況を一時的に糊塗しているに過ぎない。録音を許さない非寛容な振る舞いは、長期的に見れば、より損をするのではないか。音楽への愛情を断ち切るこのような方策は、CDの売上不振の主要な原因にいずれなってしまうのではないか。この悪循環を強化させることのないよう、コピーコントロールの廃止を願う。

もうやめてください、おねがいします。